
歯の矯正をお考えになるとき、矯正期間の長さが気になる方も多いかと思います。
たしかに、歯の矯正は長い期間がかかる歯科治療です。
軽度の不正咬合に対する部分矯正でも最低4ヶ月前後、全体矯正では1年半~3年前後かかることも珍しくありません。
なぜ、歯の矯正は長い期間がかかるのでしょうか?
今回は、「歯の矯正に長い期間がかかる理由」について、お話しします。
目次
■歯の矯正に長い期間がかかる理由
◎1ヶ月に動かせる歯(歯根)の距離は最大でも0.5mmほど
マウスピース矯正・ブラケット矯正など、矯正方式に関わらず、1ヶ月に動かせる歯(歯根)の距離は最大でも0.5mmほどです。
矯正では、前歯に空いた5mmのすき間を埋めるのに2~3年かかることもあります。
「5mmのすき間を埋めるのに2~3年」と聞き、
「1ヶ月に0.5mm歯を動かせるんだったら、10ヶ月程度(5mm÷0.5mm=10ヶ月)で矯正を終わらせられるのでは?」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
0.5mmという数字は、歯根の最大の移動距離です。歯根の最大の移動距離のため、歯ぐきから上の歯の部分である歯冠(しかん)を動かせる距離は0.5mmよりも短くなります。
歯ぐきから上の歯冠に5mmのすき間が空いている場合、その歯の歯根と隣の歯の歯根が5mm以上離れていることも。
また、0.5mmという数字は「スムーズに歯を動かせた場合の移動距離」です。
患者様によっては、
- ・歯根や顎の骨の硬さ
- ・顎の骨の代謝の遅さ
が原因で、1ヶ月に0.5mmも歯根を動かせず、1ヶ月の歯根の移動距離が0.5mm以下になるケースも少なくありません。
上記のような理由により、「歯と歯のあいだが5mm開いているから、5mm÷0.5mm=10ヶ月で矯正を終わらせられる」と、単純には行かない点が矯正治療の奥深さ(難しさ)です。
◎すべての歯を同時に動かせない
歯の矯正と聞くと、「すべての歯をまとめて動かす」イメージを持たれている方も。しかし、矯正ではすべての歯を同時に動かすことはできません。
矯正治療で、すべての歯を同時に動かすことは基本的にないのです。
原則として、歯の矯正では固定源となる歯を決めた上で、1本ずつ、動かしたい歯を移動させていきます。2本の歯を一緒に動かすこともありますが、すべての歯を同時には動かせません。
上記の理由により、すべての歯を同時に動かすことはなく、原則として1本ずつ(または2本~)歯を移動させていくため、矯正は長い期間がかかります。
(※)矯正方式・歯科医師の治療方針により、歯の動かし方が異なります。
◎治療計画通りに矯正が進むとは限らない
歯の矯正は難しい歯科治療です。
難しい歯科治療のため、治療計画通りに矯正が進むとは限りません。
もちろん、矯正を開始する(矯正装置をつける)前には、歯科医師が入念に治療計画を立案します(※)。入念に治療計画を立案しますが、装置をつけて実際に歯を動かし始めるまでは、患者様の歯の動き方(歯の動きやすさ・動きにくさ)はわかりません。
(※)インビザラインでは、矯正シミュレーションアプリ
「クリンチェック」が矯正の治療計画を立案します
(治療計画の立案には歯科医師も関与します)。
「これくらいのスピードで歯が動くだろう」と想定しながら入念に治療計画を立案しても、いざ、矯正を始めてみると、思ったよりも歯が動きにくかった…というケースは珍しくないです。
患者様の歯の動きやすさ・動きにくさのほか、矯正中は
- ・マウスピースの装着時間の不足(インビザラインなどのマウスピース矯正)
- ・矯正装置の破損
- ・矯正中のむし歯・歯周病
などが原因で矯正が滞るor一旦、矯正を中止せざるを得なくなる場合も。
上記のような理由により、治療計画通りに歯が動かず、全体の矯正期間が延びることもあります。
【歯の矯正は「マラソン」のような感覚でゆっくりと、着実に進むことが大切】
歯の矯正は「“二人三脚”で行うマラソン」に例えられることがあります。
矯正を成功に導くには、患者様と歯科医師が二人三脚でゆっくりと、着実に進むことが大切です。
長い矯正期間中には、ストレスや不安・疑問を感じる場面もあるかと思います。 矯正中、ストレスや不安・疑問を感じたときは、歯科医師までご遠慮なくご相談ください。
当院では、最後まで矯正を続けるために、歯科医師・スタッフが全力で患者様をサポートいたします。
長い道のりですが、歯の矯正は毎日の積み重ねが大切です。 歯科医師と共に、ゆっくりと、着実に矯正のゴール(患者様が思い描く理想の歯並び)を目指しましょう。
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今回は、「歯の矯正に長い期間がかかる理由」のお話をさせていただきました。
当院で行っているマウスピース矯正「インビザライン」の平均的な矯正期間については、ブログにてご説明しています。インビザラインでの矯正をお考えの方は、今回の記事と併せてご参照いただければ幸いです。